研究内容
私の専門分野は自由確率論です. 自由確率論は, 1980年代にVoiculescu氏によって誕生した理論であり, 通常の確率論では現れない「積の非可換性」,「自由独立性」を土台とした確率論です. 誕生初期には, 作用素環やランダム行列の研究に大きく貢献しました. 私は自由確率論と通常の確率論との対応について調べる研究に興味を持っています. とくに自由独立性のもとで定義されるたたみこみ演算の構造, この演算による極限定理やそれから現れる極限分布のクラスに興味があります. より具体的には, 無限分解可能分布, 自己分解可能分布, 安定分布, 極値分布といったクラスの研究を行なっています.
また近年 (2010年代中旬頃), Marcus, Spielman, Srivastavaらによって, 多項式間のたたみこみ演算として古くから知られている「多項式たたみこみ」と自由たたみこみの間には非常に密接した興味深い関係があることがわかってきました. 最近では, 私も多項式たたみこみによる極限定理の研究や, 直交多項式の漸近経験根分布の導出, 自由確率論の枠組みで考えられてきた変換 (R-変換やS-変換) の多項式版構築などといった, 多項式論と自由確率論の接続や直交多項式論への応用を目的とした研究に着手しています.
現在では, 上記の研究以外にも様々な広がりを見せています. 例えば量子情報理論や深層学習などの分野にも, 自由確率論のアイデアが使われた研究があり, それらにも興味をもっています. |
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担当講義
専攻科目では主に2年生以上向けの, 確率統計分野と情報分野を担当しています.
・確率・統計 I (確率の基礎, 離散型確率論)
・確率・統計 II (連続型確率論)
・コンピュータ I (Python基礎, データ分析)
・コンピュータ II (数理統計学, Python応用)
・応用数学 I (マルコフ連鎖, ランダムウォークなど)
・応用数学 II (測度論, ルベーグ積分) ※年度によって内容変更の可能性があります. |
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