田口 哲
  タグチ サトシ   TAGUCHI Satoshi
   所  属   札幌校
   職  名   学長
受賞年月2025/03/27
国内外別 国内
種別 国際的又は全国的規模
授与機関名公益社団法人日本化学会
受賞学術賞名第49回化学教育賞
タイトル教員養成を通じた化学教材の開発と化学教育への貢献
受賞者(グループ)田口 哲
受賞区分国内学会・会議・シンポジウム等の賞
概要1.理科教員養成を通じた新規化学教材の開発
同氏は,身近な情報技術(IT)を用いて,簡便かつ安価に化学の定量的測定が可能な教材が開発できないかとの着想をもって,教員養成課程の学生教育等を通じて新規化学教材を 20 年以上前から開発してきた。具体例を以下に示す。

1 点目は,CCD カメラとコンピュータを用いた画像解析法による反応速度測定教材である。2 点目は,手作り簡易型分光器・CCD カメラ・コンピュータを活用した発光スペクトル教育用演示実験システムである。3 点目は,条件制御下での食塩水滴からの結晶析出観察用顕微鏡システムの製作である。その他,「CCD カメラとコンピュータを活用した拡散現象の教材開発」(硫酸銅の拡散係数の測定と濃度分布の三次元イメージング),「プログラミング言語 Processing による中和滴定シミュレーションの開発と高等学校化学教育での実践」といった業績もあげた。上記業績は「化学と教育」誌等に発表されている。

2.児童・生徒への化学教育の振興
 同氏は,2002 年度より 20 年間,「北海道教育大学札幌校 拓北・あいの里地区地域連携事業『土曜講座』」の企画・運営・講座実施の中心メンバーとして携わってきた。同氏は,「光の秘密を探れ! ―色と光の不思議― DVD ディスクで分光器を作ろう」という講座を自身でも担当した。各種光源からの放射光の分光を子供たちが自作した分光器で行い,光の三原色,金属錯イオン溶液による光の吸収と着色,化学発光,蛍光灯や殺菌灯の原理等について,同氏の指導の下,理科教員を目指す学生たちがわかりやすく解説した。児童・生徒の化学への興味・関心の喚起と同時に,理科の教員養成に多大な効果が認められた。長期間にわたる科学教育による地域貢献として全国的にみても優れた取り組みと言える。

3.理科教員養成・教員研修を通じた化学教育の振興
 同氏は,「解説実験書 新しい北海道の理科『化学』」をはじめ,初等・中等教育の化学分野で取り上げられている内容を大学レベルの物理化学の視点から解説する著書・論文等を数多く執筆しており,それらは,理科の教員養成や現職教員の研修に活用されている。さらに,教育委員会と大学が連携して実施した「札幌市教員育成フレッシャーズセミナー」において,採用直前の小学校教員の卵に対して,化学領域の指導の研修を独自のテキストを使用し実施してきた。例えば,小学校理科 4 年「水をあたためたときの変化」の実験を研修生が実際に行い,安全指導に加えて,現象をよく観察させ,水の加熱という単純な操作にも豊かな化学が隠れていることを気付かせる研修を行った。